建築基準法及び建物の維持・保全について
建物の維持・保全は、管理業者が担う重要な役割の一つです。
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建物の維持・保全
保全の種類
「保全」とは竣工時点で建物全体、また一部の機能や性能を将来も維持することを言います。
保全には二つの種類があります。
1.予防保全
→点検や保守によって故障の前兆を捉えて、あらかじめ適切な処理を取ること
※賃貸物件の維持管理においてはこの予防保全が重要
2.事後保全
→事故や不具合が生じた後に修繕を行うこと
日常点検
日常点検は、建物だけでなく外溝や植栽等の清掃も対象となるため点検項目は多岐にわたります。
管理業者は貸主への点検業務の目的と必要性の説明をし納得してもらう必要があり、費用の見積もりと結果報告を必ず行う必要があります。
以下の3点は、日常点検におけいて把握しておくべき重要事項です。
・法定点検は資格者による点検作業と所轄官庁への報告義務があるため費用がかかる
・建物は時間と共に劣化し、耐用年数が到達した設備は交換しなくてはならない
・製品メーカーの部品保管義務の経過後に修理をする場合は、部品がないおそれがある
中でも決められた周期で行われる必要があるのが、資格者による点検作業「法定点検」です。
法定点検には4つの種類があります
調査・検査対象 | 報告回数 | 調査・検査資格者 | |
1.特定建物定期調査 | 敷地・構造・設備 | 6ヶ月〜3年 | 特定建物調査員 |
2.防火設備定期検査 | 防火戸、防火シャッター等の防火設備 | 6ヶ月〜1年 | 防火設備検査員 |
3.建築設備定期検査 | 換気設備、非常用照明設備、給排水設備等 | 6ヶ月〜1年 | 建築設備検査員 |
4.昇降機等定 | エレベーター・機械式駐車場等 | 6ヶ月〜1年 | 昇降機等検査員 |
これらは全て上記の資格者に加えて、一級建築士及び二級建築士による調査でも点検可能です。
また巡回点検も周期を決めて継続的に行うべき、管理業者の重要な役割です。巡回点検業務の結果を整理・保管し、各点検項目を各建物の部位や現象に分けてリストを作ることで、誰が行っても間違いない点検ができるようにしなくてはなりません。
加えて、管理業者は入居者からの情報を積極的に活用すべきであり、その際に有効となるのが常駐管理者による報告です。報告項目以外の些細なことでも巡回者とのコミュニケーションを取ることが重要になります。
建築基準法による規定
建築基準法は、建物を建てる際の構造や設備に関する最低の基準を定めた法律です。
各分野に分けて、解説していきます。
居室に関する規定
①採光と除湿
住宅には、除光と換気のために窓などの開口部の面積が決められています。
除光については、事務所や店舗ではこの規制が対象外となります。
どちらの規定も共に、必ず有効な開口部を設ける必要があります。
居室の除光 | 開口部として、各居室び床面積の7分の1以上が必要 |
居室の換気 | 開口部として、各居室の床面積20分の1以上が必要 |
②建材の規制
建材に含まれるホルムアルデヒトや揮発性有機化合物により、めまいや頭痛の症状が生じることを〈シックスハウス症候群〉といいます。この症候群対策のため、建築基準法では、2003年7月1日以降に着工された建物につき以下の規制を行なっています。
・クロルピリホス(白アリ除去剤)の使用禁止
→建築材料としてクロルピリホスを添加することや、添加した材料の使用どちらも禁止されています。
・ホルムアルデヒト(接着剤に含まれる化学物質)の使用制限
→ホルムアルデヒトを用いた建築材料については、一定の使用面積制限が課せられています。
・機械換気設備の設置義務
⇨シックスハウス対策として、換気により有害な物質を追い出すことが重要です。そこで、居室では1時間に0.5回以上、廊下や便所では0.3回以上の換気能力を有する「24時間換気設備」が必要とされています。
③居室の天井の高さ
居室の天井の高さは2.1m以上出なければなりません。また、一つの部屋の中で天井の高さが異なる場合は、その平均の高さとなります。
またロフトは、以下の条件のもとで作られる必要があります。
1.天井高は1.4m以下である 2.直下階の床面積の2分の1未満の広さ 3.用途は収納等で居室に用いないこと
避難等に関する規定
①幅・踏み面・けあげ
階段の種類 | 踊り場の踏み場 | けあげ | 踏み台 |
直下階の床面積の合計が200m2以上 | 120cm以上(高さ4m以内ごと) | 20cm以下 | 24cm以上 |
②手すり
高さ1mを超える階段には手すりの設置が不可欠で、手すりがない側には側壁等を設ける必要があります。
③廊下の幅
用途・規模 | 両側に居室がある場合 | 片側廊下の場合 |
共同住宅の共用廊下(床面積が100m2以上) | 1.6m以上 | 1.2m以上 |
④2階以上の直通階段
マンションなどの共用住宅が火事になった時に、避難階段が一つしかないことで一箇所に集中してしまい逃げ遅れる可能性を踏まえて以下の共同住宅では2つ以上の直通階段の設置が必要とされます。
⑴6階以上の階がある(面積に関係なく必要)
⑵5階以下で、各居室の面積が100m2を超える場合(主要構造部が耐火や不燃材料の場合は200m2)
⑤非常用の照明設備
共同住宅では火災や停電が発生した時、避難方向や状況の把握の困難を生じることを踏まえて、共用廊下や階段の避難経路に「非常用の照明設備」を設置することが義務づけられています。
⑥非常用進入口
全ての建築物において、3階以上の階で高さ31m以下の階には非常用進入口を設ける必要があります。
ただし、以下の場合は不要です。
⑴非常用の昇降機を設けた場合
⑵外壁面の長さ10m以内ごとに1mの円が内接できる窓 OR 幅75cm以上で高さ120cm以上の窓を設けている場合
⑦防火区画
建築物の内部で火災が発生した際に、火災拡大を最小限に抑えるために内部の区画を制限したものを「防火区画」と呼びます。
この区画にある壁や床は、耐火構造など一定のもととする必要があり、開口部を設ける場合には、防火扉や防火シャッターなどの防火設備としなくてはなりません。
各設備について
給水設備
給水設備は、配管・弁・ポンプ・水槽などで構成されます。
受水槽(貯水タンク)は水を一旦貯めておく容器を指し、保守点検と清掃ができるようにタンクの周壁と底部分は60cm以上のスペースを確保し、タンク上部は100cm以上のスペースを確保しなければなりません。
●受水槽の清掃
受水槽の清掃中は断水となるため、清掃実施日を事前に掲示板などに提示して入居者に知らせておく必要があります。
また、断水後などには赤水が出ることが多いため、同様に事前に通知しておかなくてはなりません。
●給水設備におけるトラブル
給水は各住戸で適切な水圧が保たれなくてはならず、水圧が低すぎると給湯器のガス燃焼に支障をきたして機器を壊してしまう可能性があります。
反対に高くなるとウォーターハンマー現象を起こし、メーターの故障や破損などを引き起こして、漏水の原因にもなります。
そのため定期的なチェックが必要です。
排水と通気
排水には三つの種類があります。
・汚水:トイレからの排水
・雑排水:台所、浴室、洗濯機からの排水
・雨水:雨による排水
これらの排水は、公共下水道の管の設置方法により二つの排水系統に分けられます。
❶合流式・・・排水・雑排水・雨水の全てを同一系統で排水する方法
❷分流式・・・排水・雑廃水は同一だが、雨水は別に排水する方法
キッチンやお風呂場の排水溝で見られる排水トラップ(以下URLに写真あり)は、排水口一部を水で塞ぐ『封水』によって排水管内の悪臭や害虫の侵入を防ぐ役割をしています。このトラップの深さ『封水深』は5cm以上10cm以下が必要で、深すぎると破封(トラップ内の水が無くなってしまう)が起きてしまいます。
〈破封の種類と原因はこちら↓〉
http://denzai-kanzai.com/trap-plumbing
排水トラップにはいくつかの種類があります。以下のURLで全7種類を詳しく紹介しています。
形によってメンテナンス時やトラブルの対処法が異なるため、管理上では簡単に把握しておくことも大切です。
〈排水トラップの詳細はこちら↓〉
https://news.mynavi.jp/mizu-trouble/column/drain-pipe/14712/
※2つ以上の排水トラップを直列に設置する『二重トラップ』は、排水の流れが悪くなるため禁止されています。
消防設備
不特定多数の人が利用する建物は『防火対象物』といい、消防法によって設備の点検などが義務化されています。
防火対象物は二種類に分けられ、特定防火対象物と非特定防火対象物があり共同住宅は後者にあたります。
また居住者が50人以上のマンション等の所有者(管理権原者)は、防火管理者を設置する必要があります。
管理権原者は、防火管理者に消防計画を作成させ、それに基づいて避難訓練の実施や火気の使用に関する監督をさせなければなりません。
消防設備の点検は、以下の義務が定められています。
❶機器点検:6ヶ月に一回
❷総合点検:1年ごとに一回
※マンションなど非特定防火対象物の所有者は、❶❷の点検結果を3年に一回、消防長・消防局長に報告する義務を負います。
非特定防火対象物であるマンションなどの共同住宅では消防設備(消火設備・警報設備・避難設備)の設置が義務付けられており、火災が発生した際に感知や消化が安全にかつ迅速にできることや消防隊の活動を支援することを目的として設置されています。
設備の種類
⑴消化器・・・初期消火に用いる消火用設備
⑵屋内消火栓設備・・・消化器同様、初期消火に用いる設備。1号消火栓(有効範囲が半径25m以下)と2号消火栓(半径15m以下)に分けられ、1号の方は消火作業に熟練を要し操作に2人以上必要だが、2号は一人での操作が可能。
〈消火栓の使い方↓〉
https://www.builme.jp/media/syoubouyousetubi/okunaisyoukasen_syurui/
⑶スプリンクラー設備・・・自動的に水が噴出し、消火する設備。湿式(配管内に水が充填されている)と乾式(充填されてない)に分かれる。
⑷住宅用防災警報器・住宅用防災報知設備・・・火災の発生を音声で知らせる設備。以下の規則がある。
設置義務者 | 住宅の所有者・管理者・借主などの居住者 |
設置の場所 | 就寝用に供する居室・階段・廊下・台所 |
設置の免除 | スプリンクラーや自動火災報知設備が一定の基準に従って設置された場合、設置が免除される |
⑸自動火災設備・・・火災の発生を熱や煙で感知し、自動的に火災を報知する設備。
Q.自動火災報知器と住宅用防災警報器の違いは…?
A.熱や煙を感知器が早期に自動で感知し、マンション内全域に火災を知らせるのが自動火災報知器、
寝室などにいる人に火災を知らせるのが住宅火災報知設備です。
⑹避難設備
その他設備
●電気設備
マンションなどの共同住宅では、電力会社の電気を共同引き込み線によって建物内に引き込むことを”受電”と言います。
受電の方式は電圧によって、以下の三種類に分けられます。
引き込みの種類 | 契約電力 | 供給電圧 | 借室返電設備等 |
①低圧引込み(小規模のアパート等) | 50kW | 100V/200V | 不要 |
②変圧引込み(大規模のマンション等) | 50kW以上2000kW未満 | 6000V | 必要 |
③特別高圧引込み(大規模な工場やオフィスビル等) | 2000kW以上 | 20000V以上 | 必要 |
●エレベーター
●換気
●ガス給湯
●機械式駐車場